今回は、なごみで活躍する保育士、歩先生にインタビューしました。
現場の第一線で働くからこそ見えてくる「リアルな日常」や、教科書通りにはいかないからこそ面白い支援の裏側。
歩先生の言葉を通じて、なごみの療育を知っていただければ幸いです。

——まずは、保育士を目指したきっかけを教えてください。
きっかけは、私が中学1年生くらいのときに「なごみ」ができたことです。
母が創設した施設なのですが、母の仕事の合間になごみに通うお子さんたちと一緒に遊ぶ機会がありました。
でも実際に遊んでみると、今まで関わってきたお友達とは全然違う子が多くて、コミュニケーションの壁のようなものを強く感じたんです。
何もしていないのに「お前がいるからなごみをやめる」と言われたり、「死ね」と直接言われたりしたこともあり「どうやって関わればよかったんだろう」と悩むことばかりで、当時はすごく落ち込みました。
当時は子どもたちの特性について知識がなかったので、その言葉を真に受けてしまい、理解できないぶんとても傷つきました。
今思えば、それは「寂しい」「一緒に遊んでほしい」という気持ちの裏返しだったとわかるのですが……。
そんな経験を経て、「子どもたちのことをもっと理解したい」と思ったのが、保育士を目指した原点です。
実は最初、保育士になるか調理師免許を取るかで少し迷っていました。
どちらにしても「子どもたちとクッキングをしたい」「子どもに関わる仕事がしたい」という軸は決まっていたので、どちらの資格でアプローチするかを考えていたんです。とにかく子どもたちの役に立ちたいという気持ちでした。
——幼稚園に就職せずに、放課後デイサービスの保育士として就職した理由
学生時代の幼稚園実習がすごく楽しくて、園からも「ここで働かない?」と声をかけていただいていました。
ただ、将来を考えたときに「幼稚園」と「放課後等デイサービス」での働き方の違いや、子どもたちとの関わり方について深く考えたんです。
発達障害があって特性の凸凹が大きい子と、凸凹があまりない子。
どちらの将来がより壁にぶつかりやすいかを考えると、やはり凸凹が大きいお子さんの方が社会で大変な思いをすることが多いのではないかと感じました。
そう考えたとき、私は「発達障害のあるお子さんの力になりたい」という気持ちがより強くなったんです。
幼稚園でたくさんの子の成長を見守るのも魅力的でしたが、なごみでは幼児から高校生まで長く関わることができます。
「ここで子どもたちの成長をじっくり見守っていきたい」と思い、なごみへの就職を決めました。
実際、小学1年生から通っていた子が中学生になり、小学校2〜3年生だった子が高校1年生になるまでずっと通ってくれています。
通常級に通う子の場合、周りの理解度によって本人の変化も大きく変わってきます。
自分の気持ちをパニックや体で表現するのではなくちゃんと言葉で伝えられるようになったり、苦手な状況になったときに我慢して周りに伝え、一歩その場を離れるといった対処が自分でできるようになったりします。
学校で怒られ続けて自己肯定感が下がり、遊ぶものを選ぶことにすら自信がなかった子が、小さな成功体験を積み重ねることで自分から選択できるようになっていく。
そうやって自信を持って行動できるようになる姿を見られることに、やりがいを感じます。
——なごみではどのように働いていますか?
なごみで働き始めて7年目になりますが、一番変わったのは「子どもたちのことがもっと好きになった」ということです。
新人の頃は「とにかく役に立ちたい」という一心でした。しかし、子どもたちのことを知っていく中で、自分の意識も大きく変わっていったんです。
学校でたくさん怒られてきて、「なごみに来ても自分は嫌われているんだ」と思い込んでいる子から、「お前は地獄に行く」なんてひどい言葉を投げかけられることもあります。
でもそれはお試し行動で、「こう言ったら怒るだろうか」と子どもなりに探っているんです。
そういうときは、「その言葉は傷つくから言わないでね」と添えて注意しますが、それ以上に「そんなことで嫌いになんてならないよ」「あなたのことが好きだから大丈夫」と伝えるようにしています。
そうすると、その子の怒りや攻撃的な言葉がふっと止まり、他の子たちの遊びの中にスッと入っていって、その後すごく穏やかな時間を過ごせたりするんです。
子どもたちの背景や心を知っていく中で、お互いに楽しく過ごせるようになり、今ではなごみの子どもたちのことが愛おしいです
——なごみで培ったスキルなどあれば教えてください
一番は、何が起こっても驚かなくなったことです。
子どもがパニックになったとき、支援する側が冷静でいないと適切な対処ができません。どんな状況でも落ち着いて対応できるメンタルが鍛えられました。
また、子どもたちとワクワクできる療育を企画する発想力も豊かになったと感じます。
子どもたちの特性を深く理解するプロセスを通して、「誰しも多少の凸凹を持って生きているんだ」と思えるようになり、人間そのものへの理解も深まりました。
毎日子どもたちから元気をもらっているおかげか、年齢を言うと「もっと若く見えた!」と言っていただけるのも嬉しいおまけです(笑)。
専門的なスキル面では、「感覚統合」について学びを深めてきました。日々勉強したり学会に参加したりして知識をアップデートしその子の身体能力に合わせて動きを提案するスキルが身につきました。
特別な感覚遊具がなくても、たとえば家庭でお皿洗いの手伝いをするだけで手先の微細運動になります。
体の使い方が少し不器用な子は、しゃがむときに姿勢がS字に歪んでしまったりするので、あえて「ここのボールを取ってみて」と姿勢を変えさせ、バランス反応を使って体幹を整えるアプローチをしたりします。
さらに、コーチングの考え方も取り入れています。
北海学園大学の教授から「昔は教え込む『ティーチング』だったけれど、今は問いかける『コーチング』の時代だよ」と教えていただきました。
もちろん教えることも大切ですが、トラブルが起きたときに「どうしたらよかったと思う?」と自分で考えてもらう関わり方を意識しています。
これは子どもの自立に向けた大きなチカラになっていると感じます。
——保育園となごみの保育園との違いはありますか?
保育士の友達の中には、グレーゾーンの子の対応に悩み、「もう限界……」と辞めてしまった人もいます。
発達障害のある子どもへの理解は、適切な知識や経験がないと現場で一人で抱え込んでしまいがちです。
その点、なごみでは月に1回、札幌市自閉症・発達障がい支援センターおがるの坂井先生が来てくださる環境があります。
自分が現場で「どう対応すべきだったか」という悩みをダイレクトに相談できるんです。
先生は私たちの話をしっかり受け止めて「それでいいと思うよ」と承認してくださったり、「その子にはこういう背景があったからそう動いたのかもね」と、子どもと私たちの両方の味方という立ち位置から客観的なアドバイスをくださいます。
だから現場で悩みを溜め込まず、毎回の療育に活かせるんです。
一人で抱え込まずに相談できる先輩や専門家が近くにいるかどうか。
この環境の違いは、長く働き続ける上で本当に大きいと感じています。
——あゆみ先生の1日を教えてください
なごみでの1日は、出勤後の「送迎確認」と「おもちゃ等の準備」から始まります。
準備が整ったら、まずは未就学の幼児の送迎へ向かいます。
事業所に戻ってきてからは、学習や運動、余暇活動、感覚運動などを幼児と一緒に行います。子どもたちと一緒にお昼ご飯を食べた後、休憩に入ります。
14時半頃からは小学生たちが学校を終えてやってくるので、再び送迎に出ます。
その後、小学生の療育をし17時頃に小学生たちをご自宅へお送りし、戻ってくるのが大まかな流れです。
——療育内容はどう考えているの?
子どもたちと行う「工作アクティビティ」のアイデアは、普段からコツコツ調べたり情報を集めたりして考えています。
以前は「これをやりたい!」と思っても材料を買いに行く時間がなく、アイデアがボツになることも多かったんです。
でも今は、他のスタッフと協力し「やりましょう!」と買い出しを担当してくださるので、すごく助かっています。
アイデアを出して写真で見せ、山口さんに試作用の材料を買ってきてもらい、スタッフみんなで試作して採用を決める……という良いチームワークができています。
思いついた企画を形にできる機会が増えて、本当に嬉しいですね。
工作を考えるときは、小学1年生から高校生まで幅広い年齢層が一緒に楽しめる工夫をしています。
難易度は高めでも、失敗しても可愛く仕上がるものを選ぶのがコツです。
たとえば「レジンキーホルダー」を作る際、液が固まりきらずに溶けてしまっても「薄っぺらくなっても、溶けてても可愛い形だよ!」とポジティブに伝えられるような工夫を盛り込んでいます。幼稚園や保育園のように大人が下準備をすべて済ませるのではなく、子どもたちが自分の手で達成感を得られるようなプロセスを大切にしています。
——今後、なごみで取り組んでいきたいことは何ですか?
保護者の方々との関わりも、もっと深めていきたいと思っています。
保護者対応は毎回すごく緊張しますが、「なごみでのお子さんの様子」を積極的にお伝えして、「そんな成長があったんですね!」と喜んでいただけると本当に嬉しいです。
普段の送迎時や保護者会でのコミュニケーションを通じて、ご家庭と一緒に子どもたちの成長を見守っていけるような、温かい関係性をこれからも築いていきたいです。
